scene 9 …


 

 体調を崩して寝込むと、過去の記憶ばかりが蘇るのはどうしてだろう。
  うとうととまどろんでは、走馬燈のようにいくつものシーンが額の上を流れていく。思わず口をついて出てきてしまった失言、躊躇いすぎて言いそびれてしまった謝罪。ひとりぼっちで残されて、とぼとぼ歩いた帰り道。遙か向こうに霞んでいた思い出から最近起こったばかりの出来事まで、その内容は様々だ。だけど最後には必ず後悔の気持ちばかりが浮き上がる。
  思い切って行動を起こしても踏ん切りが付かずに立ち止まってしまっても、結局は上手く行かない。自分の周りの全てが、思い描いた未来とは逆さまに動いていく。一体私が何をしたというの……? 選択を見誤ってばかり、もしかしたらこの先の人生もずっとこんな風に過ごしていくのだろうか。
  どこか遠くでアラームの音。
  ぼんやりと瞼を開けば、そこにあったのは見慣れた自室の天井だった。
  就職を期に借り換えたアパート、もうすっかり自分の居場所として定着している。更新の時期も待たずにどんどん条件のよりよい部屋に借り換えをしていく友達もいるけど、自分はとてもそうは出来ないなと思っていた。のんびり屋と言えば聞こえはいいけど、結局は変化に弱い生き物なんだろうな。ああ、嫌だ。こんな時にまた自分のマイナス部分をわざわざ思い起こさなくてもいいのに。
  枕元の時計は静かなままだった。よくよく考えてみれば、音も少し違う。ずるずると記憶を引きずり出すように想いを巡らせ、ようやくそれが携帯の呼び出し音だと言うことを思い出す。帰宅してそのまま横になったけど、バッグはどこに置いたのだろう。音源を頼りに手を伸ばすと、幸いにもそれはベッドのすぐ脇に置かれていた。
「……あ……」
  ストラップを引っ張って発掘したそれを確認すれば、液晶画面にはお馴染みの名前が記されていた。急ぎの時以外はいつもメールなのに、わざわざ電話なんてどうしたのだろう。大体、今日の約束はさっきちゃんとキャンセルしたはず。追って連絡しなければならないような用件も特にないと思う。
「もしもし?」
  すっごいかすれた情けない声。やだな、こんなのって。メールならいくらでも取り繕うことが出来るのに、わざわざこちらの恥を晒させようなんて趣味悪いよ。
「良かった、もう部屋に戻ってるのか?」
  短いひと言にイライラの全てをぶち込んだつもりだったのに、全然伝わってないのに腹が立つ。そんなに嬉しそうに応えることないでしょ、何考えてるのよ。
「うん、……寝てた」
  言い訳なんてしなくても、この声を聞けば丸分かりだろうな。長く眠り込んでたように思えたけど、実は戻ってから一時間も経過してなかった。
「そうか、少しは楽になったか?」
  零士の声に、雨音が重なる。どこか外からかけているのかな、いつものコートに身を包んだ立ち姿が街角の風景に浮かんで来た。片手にはタバコかな、でもそれじゃあ傘が差せないか。どこかの建物のひさしに入っているのかも。
「病院に寄って薬ももらってきたし、そう大したことはないと思う」
  インフルエンザの検査結果も陰性だったし、土日に休めばすっかり回復するだろう。まあ、身体が本格的に壊れる前に警笛を鳴らしてくれたんだからそれで良かったんだよね。これくらい大丈夫だろうと思っているうちに気がついたら入院騒ぎになってたとか、仲間内でも良く聞く話だ。
「そうか」
  短い言葉が途切れて、また雨音が一段と大きくなる。別に外からかけてくることないのに。心配してくれるのは嬉しいけど、余計なことして零士まで体調を崩したら情けないよ。ああ、それにしても額の辺りが重いな。こうやってただ横になって会話してるだけで、信じられないくらい体力を消耗してしまう。
「じゃ、……」
  そろそろ切ってもいいかな、そう思いながら言いかけた私の言葉に被さった零士のひと言に、私は布団から跳ね上がってた。
「ドアのところまで歩いてくることは出来るよな、……鍵を開けて欲しいんだけど」

  どうして? まさか来てくれるなんて思ってなかったのに。
  寝起きのまま頭をなでつけることも忘れてドアを開ければ、そこには携帯を握りしめたままの零士が立っていた。もう片手にはタバコじゃなくてスーパーの袋、腕にはいつもの傘の柄が引っかかっている。
「いいよ、寝てろよ。辛いんだろ?」
  ふらふらと歩き回ろうとする私を制して、零士はまるで年長者のような口調になる。そんなこと言ったってさ、お客が来るとは思ってなかったもの。こんなに部屋が散らかってたら、さすがに恥ずかしいよ。零士の部屋と比べたら、幾分は床の見える面積が広い気もするけど……でもだからといって。普段はもうちょっとマシなのに、口惜しいな。
「俺も夕飯まだなんだ。台所勝手に借りるぞ、出来たら声を掛けるからそれまで寝てろよ」
  背中越しの言葉に、すごすごとベッドに退散。ここでごねても仕方ないしね、いくら大したことないとは言ってもやっぱり本調子じゃないんだし。でも変なの、男の人がキッチンにいる姿ってすごく不思議。そう言えばこんな光景、あまり見たことないな……。
  元通りに横になって布団を被る。
  廊下が少し広くなっただけのキッチンに後ろ向きで立っている零士が慣れた手つきで鍋を出したり、食器を出したりしてた。まあ、元々が世話好きの気働きなんだものね。きっと仲間が具合悪くなったときにはいつもこんな風に看病しているんだろう。ふうん、意外と手つきがいいんだなあ。
  そのうちに目を開けているのも億劫になってきて、知らないうちに寝付いていた。それでも頭の片隅が動き続けているみたい、ぼんやりと物思いが続いてる。
  こんな風に寝込むのは初めての経験ではない。体調には普段から注意しているつもりでも、年に何回かは風邪をこじらせることもある。
  大学に入りたての頃は、美春がいつも看病に来てくれたっけ。もちろん逆の立場のこともあった。あのとき彼女が作ってくれたお鍋は美味しかったな、味噌仕立てで里芋がいっぱい入ってて。友達の有り難みをひしひしと感じた経験だ。
  四人組が自然消滅してからは、その時々の友達が来てくれることもあったけどだいたいはひとり。そう言えば彼氏に来てもらったこともなかったな、何というか格好悪い姿は見せたくなくて……申し出てくれても「平気だから」と断ってた気がする。いつも強がってばかりいた、弱みを握られてなるかと思ってた。そんな風に粋がっていたから、自然体の恋愛も難しくなってしまったのかな。
  あれから零士は。自分らしい生き方でここまで歩いてきたんだろうな。美春への恋が破れたあとも無理に自分を飾ることなんてしないで、今自分に出来ることを着実にこなして来たんだ。
「同盟」だからと色々難癖付けたりしたけどさ、零士は今のままで十分に素敵だと思うよ。だって私みたいに―― 本当ならあんまり会いたくもないような相手にでも、ちゃんと手を差し伸べてくれる。そんな風選り好みすることなく接することが出来るなら、運命の相手にも必ず巡り会えるはずだよ。それが自分じゃないのがちょっと口惜しいけどね。
  ただひとつ、ひとつだけ難点を言えばね。零士のその分け隔てのない優しさが、時として誰かを傷つけることもあるんだ。そう、こんな風に期待しそうになる。これってすごく酷だよ、病気で弱っている人間にはまともな判断能力もなくなっちゃうんだから。
  ……ううん、大丈夫。私はちゃんと分かってるから。
  思いがけない再会。
  短い間だったけど、私たちは「戦友」として互いを応援し合ってきた。「同盟」を解消してしまった今、もう零士に私の恋を応援してもらうことは出来ない。絶対に無理だって、分かってるから。だけど、……私の方が零士を応援することは出来るよ。美春と沖田くんの時は彼らの姿を見ているだけで辛くて逃げてしまった、でも今の私ならきっと大丈夫だと思う。
  すぐには無理だけど、もう少し時が経てば色んな相談にも乗れるようになるよ。そしたらまた、ふたりで泣いたり笑ったり楽しく過ごそう。もしも……もしもそれを零士が望んでくれるなら。
  近すぎて、運命の相手だと気づけなかった。もう少し早い段階で自分の気持ちに素直になっていたら、結果は変わっていたかも知れない。だけどもう、それは過ぎてしまったこと。後戻りは出来ない、私に与えられたポジションは永遠の「二番目」だ。

「……志穂?」
  どこで記憶が途切れたのかは分からない。聴覚の端っこで食事の支度をする音を聞きながら、いつの間にか本格的に寝入っていたのだろう。再び名前を呼ばれたとき、思いがけないほどの時間が経過していた。
「随分楽になったみたいだな、熱もひいたか? 顔色も……だいぶ良くなったみたいだ」
  安堵の表情でこちらを見下ろす立ち姿を見て、ハッとする。彼はここに辿り着いた時と同じように、すでにコートを羽織っていた。
「帰るの……?」
  時計の針はすでに十一時を回っていた。これ以上遅くなれば、電車の乗り継ぎも悪くなる。当然の行動だと思いつつも、私はついそう訊ねていた。
「ああ、明日も予定が入ってるんだ。週末にやろうと持ち帰ってきた仕事もたくさんあるし、だから……」
  零士は私の言葉に素直に頷くと、当然のようにそう告げた。普段食事に誘われるときも、この時間がふたりのタイムリミットになる。彼には彼の暮らしがある、こちらにばかり合わせてはいられない。そんなこと、最初から分かってる。当たり前の友達だと思っていた頃は、暗黙の了解だった。
「……どうしても?」
  だけど、私はさらにそう聞いてしまった。この部屋に、またひとりきりで取り残される。当然の成り行きをどうしても認めることが出来なかった。一体私はどんな顔をしているのだろう、零士はまた静かに頷く。「そうだよ」と言わんばかりに。
「じゃあな、また明日にでも連絡入れるよ。……お大事に」
  くるりとこちらを向いた黒い背中。 テーブルの上に置かれたひとり分の食事。そう、いつもと同じ。何も変わらないシーン。それなのに、今日の私にはこれが永遠の別れのように感じられた。
  心配だったから、わざわざ来てくれたんだよね。ご飯の支度までしてくれて、あまりに気持ちよく寝入ってる私を起こすに起こせずにぼんやりと時間を持て余していたんだろう。ちゃんといとまの挨拶をしてくれるだけでも有り難い、寝ている間にいなくなっているのは辛すぎるから。
  だけど、だけど。
「―― 待って、零士」
  思いがけずに低い声が出た。おなかの底から無理に絞り出したような、強い響き。零士は後ろ向きのまま立ち止まる、でも振り向かない。
「ひとつだけ、質問に答えて欲しいの。……いい?」
  駄目だよ、止めようよともうひとりの私が止めに入る。何でこんな時に、切り出さなくちゃならないの。でももう後戻りは出来ない、いつでも良い終結なら少しでも引き延ばさない方が心の痛手も少なくなる。どうせ体調を崩してぼろぼろになってるんだ、この上の打撃なんて大したことないよ。
「後悔、してるの?」
  言葉そのものは疑問形であったけど、強めの口調は「してるんでしょ?」という断定の響きをしていた。振り向かないままの背中、見つめているとそこに確信の色が濃くなっていく。
  しばらくはお互いに黙ったまま。
  降り続いている冬の雨だけが、窓の外を打ち付けていく。再び口火を切ったのは私の方だった。
「だったら、もういいんだよ。こんな風に中途半端なのは止めようよ。零士は優しいからさ、途中で投げ出せないと思っちゃうのは分かる。だけど……やっぱり良くないから。このまま何事もなかったように過ごしていくのはお互いのためにならないよ? そうしないと、そうしないと私……っ!」
  半開きになった扉を興味本位で開けてしまったのは私。
  引き返せる瞬間は何度もあったのに、そうは出来なかった。ふたりでいる時間が楽しくて、何も構えずに伸び伸びと過ごせるのが心地よくて、そんな風にずっとずっと続いていけたらいいなとか……きっと無意識のうちにそう思い始めていたんだと思う。
  そしてそれは「友達」として心を許してくれていた零士に対して、とても失礼な行為だったんだよね。分かっているけど、止められなかった。零士が優しいから、包まれる安心感に酔い続けていた。
  一度堰を切ったら、止まらなくなる涙。どんどん溢れてくる雫を私は必死に拭った。駄目だよ、こんな風に女の涙を武器にしたら。こういうのってすごく姑息、だから止めなくちゃ。
「きっ、今日はありがとう、嬉しかった。……だから、もういいよ。これきり、私のことは気に掛けないで」
  たった一夜の「過去」を引きずったまま生きて欲しくない。あれくらいのこと、何でもないから。別に初めてって訳でもないし、こっちも気にしてない。だけどふたりでいたら、この先も絶対に思い出すでしょう? 私たちはもう「友達」に戻れないんだよ。だったらこの先は会わない方がいい、全くの他人に戻るのが良作だと思う。
  また沈黙が続く。何を告げられても何も告げられなくても、どちらでも大丈夫だと自分に言い聞かせていた。
  確かに今は辛い、だけどどんな悲しみも時の流れが全て解決してくれる。このまま一緒にいたら、私は必ず零士に甘えてしまうだろう。自分の全てを晒して支えてもらう心地よさをもう一度味わいたくて、無理を言ってしまうに違いない。それで自分が救われても、零士にはさらなる傷を負わせることになってしまう。
「……何で」
  どれくらいの時間が過ぎたのだろう、ようやく零士が口を開く。そしてこちらに振り向いた彼が見せたのは、意外すぎる表情だった。
「何で、そんなことを言い出すんだ? その、『後悔』とかどうして出てくるんだよ。訳分からないよ、志穂の言うことは」
  信じられないという感情を顔に貼り付けたまま、彼は首をひねる。ここに来てしらばっくれるつもりなのかしら、いやそれじゃいくらなんでも大人げないよ。
「そりゃ、確かに驚いたよ。いきなりあんな風になっちまうんだから、当然だろ? さすがにすっ飛ばしすぎてヤバイかなとは思ったけど、……だけどそれは『後悔』っていうのとは全く違う。うやむやにしたのは悪かったと思う、でも何か改まって口にするのもはばかられてさ……だから俺、自分なりに精一杯やってるつもりだったんだけど」
  今度は私の方が驚く番だ。だって、零士の言葉の意味がさっぱり分からない。「精一杯」って、どういうこと? 何なの、一体。
「あー、嫌だな! なんて言ったらいいのか、さっぱり分からない。こういう風にぐだぐだしているのは止めようと思ったけど、やっぱり無理だよ。どうやって言えば分かってもらえるのか、全然思い浮かばない……!」
  零士は部屋の真ん中にどっかり座り込むと、そのまま頭を抱えてしまった。何というか、同じところをぐるぐる回っているような、そんな雰囲気でいるのは感じ取れる。だけど、……何をそんなに困っているの? こっちだって分からないのは同じだよ。
「……零士?」
  もしかして私たち、ふたりして自分自身の中で勝手に色々と考えていたりした? 私が零士の気持ちがよく分からなかったのと同じで、零士も私の気持ちが分からないでいたの? 何だか、このままいくら言葉を重ねたところで、良策が浮かび上がってくるとは思えない。どうすればいいんだっけ、こういうとき。私は、私たちは今度こそどんな恋愛をしたいと思っていたんだっけ……?
「その、後悔していた訳じゃないんだね?」
  身体を起こして、ベッドを降りる。薬が効いたのかな、それともゆっくりと寝たのが良かったのかな。足取りがすごく軽い。ほぼ全快って言ってもいいかも。
  零士が俯いたままで頷く。その姿を確認したから、ゆっくり一歩ずつ進んでいった。
「だったら、何で……何でもない振りをしたの? それって、元に戻ろうと思ってたんじゃないの?」
  今度は首を横に振る。まるで命令で動く人形みたいだ。何なのよ、もう。
「も、元に戻ろうなんて気はなかったけどさ。……何というか、一足飛びじゃなくて……振り出しからきちんと始めたかったんだ。あんな風になっちまったから、だからまあいいだろうってそういうのは嫌だったから。きちんと認めてもらいたかったんだ、俺じゃなくちゃって――」
  かなり我慢してたんだからな、と小さな声で付け加える。うなだれた首筋、そこに腕を回して背中にしがみついた。だけど、すぐに振り払われる。そして零士は「冗談じゃないよ」という顔でこちらに向き直った。
「そういうのが、困るんだよっ! あのな、分かってくれよ。俺だって具合の悪い人間に手出しはしたくないんだ、でも……無理だよ。こんな風に一晩一緒にいたら絶対に我慢できなくなる。志穂はずるいよ、いつだって涼しい顔して俺を挑発しまくって。ああ、こんな女だって最初から分かってたらっ、……」
  そこまで来て、ハッとして口をつぐむ。ばつの悪そうな顔をのぞき込むと、零士は「何でもない」とそっぽを向いてしまった。
「何よ」
  我ながら意地が悪いなあと思う。だけど、お互いにまとまらない言葉で気持ちをぶつけ合ったら、今まで混沌としていた風景ががらりと色を変えた。零士が私に見せていたひとつひとつの行動、投げかけた言葉。それが思っていたのとは全く違う見解を示してくる。
「今更、振り出しに戻るなんて無理だと思うけどな。そういうの、往生際が悪いって言うんだよ?」
  一度開けてしまった扉はもう再び閉じることはない。最初は興味本位で覗いてしまった見当違いの場所でも、それがビンゴという場合もきっとあるはず。
「それとも、過去のある女はやっぱり嫌?」
  いや、それほどの内容はないんだけど。零士には何もかも洗いざらいしゃべっちゃったしなー、もうちょっとミステリアスな部分は残しておいた方が良かったかなと後悔してる。今となったら仕方ないんだけど、それが駄目だと言われたらお終いなんだけど。
「そんなこと、あるわけないだろ?」
  ぐるりと回って鼻先がくっつくくらい顔を近づけたら、こつんとおでこを小突かれる。おいおい、仮にも病人相手に暴力は良くないよ。しっかりと睨み付けるつもりが、ついつい笑ってしまう。
  すると零士が、今度は私の頬を突いた。
「最初から腹が立つ女だとは思ったよ。自分の恋が上手く行くようにと、勝手に人の相手まで決めつけたりしてさ。ちょっとカマ掛けたら食い付いてくるし、全くいい根性してるよ。勘違いもほどほどにしろって言うんだよ?」
  え、何? と聞き返す間もなく、抱き寄せられる。
  だけど片手で引き寄せられたその格好は、まるでプロレスの技を掛けられてるみたいだ。何だか、どうにもロマンチックになれない私たち。だけど、それもまたいいかなと思えてしまう。
「ようやく同じ土俵に立てた気分だったんだ」
  明日の朝、今年のクリスマスの予定を訊ねるつもり。
  だけど、その答えは聞く前から多分決まってる。そもそも「扉」は私が開いたのか、それとも知らない間に招き入れられていたのか。今となってはどこまでが真実なのかも怪しいな。
  私の隣にいるのは、不器用な男の振りをしたとんでもないペテン師だったのかも知れない。

了(070509)
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