和歌と俳句

後拾遺和歌集

恵慶法師
もみぢ見む残りの秋もすくなきに君ながゐせば誰とをらまし

返し 祭主輔親
をしむべき都の紅葉まだちらぬ秋のうちにはかへらざらめや

源道済
つねならばあはでかへるも歎かじをみやこいづとか人のつげける

増基法師
みやこ出づるけさばかりだにはつかにもあひみて人を別れましかば

藤原道信朝臣
別れての四年の春の春ごとに花のみやこを思ひおこせよ

藤原惟規
あふさかの関うちこゆる程もなくけさはみやこの人ぞこひしき

藤原長能
よのつねにおもふ別れの旅ならば心見えなる手向けせましや

選子内親王
行く春とともにたちぬるふな道を祈りかけたる藤なみの花

返し 筑後守藤原為正
祈りつつちよをかけたる藤なみにいきの松こそ思ひやらるれ

藤原道信朝臣
たれがよもわがよもしらぬ世の中にまつほどいかがあらむとすらむ

藤原倫寧朝臣
君をのみたのむたひなる心には行く末とほくおもほゆるかな

返し 入道摂政
我をのみたのむといはば行く末の松のちよをも君こそはみめ

堪圓法師
山のはに月かげみえば思ひ出でよ秋風ふかば我も忘れじ

相模
たびたびのちよをはるかに君やへむ末の松よりいきの松まて

相模
いとはしきわが命さへゆく人のかへらむまでとをしくなりぬる

大江嘉言
命あらば今かへりこむ津の国の難波ほり江の蘆のうら葉に

中納言定頼
かりそめの別れとおもへど白河のせきとどめぬは涙なりけり

橘則長
別れ路にたつけふよりもかへるさを哀れくもゐにきかむとすらむ

慶範法師
誰よりも我ぞかなしきめぐりみむ程をまつべき命ならねば