よみ人しらず
別るべきなかとしるしる睦まじくならひにけるぞけふはくやしき
返し 良勢法師
名残ある命と思はば友綱の又もやくるとまたましものを
藤原家経朝臣
春は花秋は月にとちぎりつつけふを別れとおもはざりける
源兼長
思へただたのめていにし春だにも花の盛りはいかがまたまし
源道済
おもひいでよ道は遙かになりぬとも心のうちは山もへだてじし
源道済
とまるべき道にはあらず中々にあはでぞけふはあるべかりける
中納言定頼
松山の松のうら風吹きよせばひろひてしのべこひわすれ貝
返し 源光成
たたぬよりしぼりもあへぬ衣手にまだきなかけそ松がうらなみ
源兼澄
かくしつつ多くの人はをしみきぬ我をおくらむ事はいつぞも
源為善朝臣
暮れて行く年とともにぞ別れぬる道にや春はあはむとすらむ
祭主輔親
あふさかの関ぢこゆともみやこなる人に心のかよはざらめや
赤染衛門
行く人もとまるもいかにおもふらむ別れてのちの又の別れを
中原頼成
いづちともしらぬ別れのたびなれどいかで涙のさきにたつらむ
祭主輔親
あふことは雲井はるかにへだつとも心かよはぬ程はあらじを
藤原節信
帰りては誰を見むとかおもふらむ老いて久しき人はありやは
連敏法師
筑紫舟まだともづなもとかなくにさしいづるものは涙なりけり
大江正言
ふるさとの花のみやこに住み侘びて八雲たつてふ出雲へぞ行く
前大納言公任
天の河のちのけふだにはるけきをいつともしらぬ舟出かなしな
寂昭法師
そのほどとちぎれる旅の別れだに逢ふ事まれにありとこそきけ
よみ人しらず
いかばかり空をあふぎてなげくらむいく雲井ともしらぬ別れを