和歌と俳句

西島麦南

茶の花に藁火の埃かかりけり

恪勤の日あし短くなりにけり

餉をつぐる家ぬち暗く日向ぼこ

寒の水かそけきおとに煮たちけり

寒中の画房花満つ陶壺かな

一家みな病母につかへ冬ごもり

蓮掘りに午過ぎの日の風だちぬ

冬暖の地靄に乳む家鴨かな

寒凪の落木もろく踏まれけり

双鶴の影をかはして凍てにけり

くすだまの妙にも白き冬灯かな

はるかにもをろがむ墓の冬霞

霜どけや崩れてひくき土饅頭

冬日さす式台ひろき山屋敷

酒熱く寒の蕗の芽たまはりぬ

薄雪す養魚池畔の桐畠

雪折の笹青々とみづきけり

風花す余燼を踏みて愁ひけり

八衢の夜のふけにけり雪達磨

寒ゆるぶ一夜の靄や山廂

そくばくの余命を惜しみ寒灸

ひたひたと担ひこぼしぬ寒の水

寒見舞したたむ墨のかんばしき