和歌と俳句

西島麦南

禽獣とゐて魂なごむ寒日和

襟巻や畜類に似て人の耳

枯菊の香を愛しともむなしとも

枯菊を刈らんと思ひつ ゝ今日も

山茶花の日和に翳のあるごとく

煮凝りの魚の眼玉も喰はれけり

人影す堆の初霜あたたかに

雪めがね柩車音なく過ぎゆけり

雪達磨とけゆく魂のなかりけり

の屋根見え山ふかく大厦あり

着ぶくれて老いしと思ふ若しとも

冬の蝶睦む影なくしづみけり

冬の蝿やがてはとづる眼もて追ふ

熱湯をむさぼりこぼすたんぽかな

白き息ゆたかに朝の言葉あり

貧の香のきこえて煮ゆる根深かな

木の葉髪せめて眸は明らかに

木の葉髪一生を賭けしなにもなし

葉牡丹の渦一本にあふれたる

春隣る空かたぶけて牡丹雪

跫音の老いしとおもふ夜番かな

ひよどりに照る葉のしげき冬つばき