雲海に蒼荒太刀の峰のかず
日の霧の間に青空のいく柱
霧の崖書柵いく重に積みしごと
夏山に断崖自ら爪を立て
夏山のあまた山ひざ牛馬佇つ
巌頭の薊や海の雲丹のごと
天地蒼き固唾をのんで巌の鷹
雷雲の間に残光の空しばし
牛馬啼く山の闇あり灯蛾の宿
月代も飛ぶ稲妻も山亦山
かの鷹と牛馬が夜月の峰
秒盤の中まで夏の山月澄む
朝霧やまづ岩山の岩を仰ぐ
朝霧や牛馬は四肢の上に醒む
朝霧や首ふるごとく嘶えし声
夏芝に牛馬の朝いきあまた光る
影絵めく牛馬朝日を織る蜻蛉
露の岩に片肢掛けし馬の姿
ひたひ髪思ひ深げに露の馬
露の仔馬たてがみ豊か振り分けに
青栗の幹に頭を寄せ馬の陣
岩が寝し夏芝に寝て牛の陣
九十九路下る泣きむし仔牛爽かに
夏山の懸路あまたに牛さまざま
渓清水牛の銀鐶鼻ゆ垂れ