いろいろの はなの袂を ぬぎかへて 夏の衣に 今日ぞなりぬる
卯の花の 咲ける垣根は 布さらす 生野の里の ここちこそすれ
はふり子が 祝ひてとれる あふひ草 かけてぞ頼む 神のしるしを
あらてくむ しづが垣根の ほととぎす 鳴けどもなれる こゑはやつれず
たはれをが 袂にかくる あやめ草 根よけなりとや 人のみるらむ
おひわたる 早苗もおなじ 色なれば 水のみどりの ふたへなるかな
さつき闇 みねにともしの みゆるかな をのへや鹿の たちどなるらむ
五月雨の 晴れせぬころは 芦の屋の 軒のいと水 絶えせざりけり
わがそのの 花たちばなの 色みれば 黄金の鈴を ならすなりけり
雨風に 荒れのみまさる 野寺には ともし火かほに 蛍とびかふ
しばのやの はひりの庭に おく蚊火の けぶりうるせき 夏の夕暮れ
はちす葉は たへなる法の 花なれば まことの池の こころにぞ咲く
すめらぎの かしこき御代の しるしには 氷も夏の ものとこそきけ
夏の日も 涼しかりけり いはまより もりくる清水 むすぶたもとは
いにしへの さばへなしける 神だにも けふの禊に なごむとぞきく