和歌と俳句

源俊頼

あらしのみ たえぬみやまに 住む民は いくへかけける とふのつかなみ

あれはてて むねもくもらぬ 宿なれば ならでは もる人もなし

いなうけし なれども 程経れば さもあらぬ人の 袖濡らしけり

には はなだの袂 かへるとも わか遠妻を ふれずはやまじ

みをつめば 下やすからぬ 水鳥の こころのうちを 思ひこそやれ

池水に 通ひてかげの すみぬれば 氷を月の 妻とみるかな

霜のうへに 光さしそふ 月影を この身ながらも ながめつるかな

はらの池の 葦間にやどる 月影は 別れし秋の 形見なりけり

蓬だに 霜枯れにける 宿なれど 今宵の月は とこめづらなり

君来ばと はにふのこやの ゆかの上に あさてこふすま ひきてこそをれ

すみがまの けぶりならねど 世の中を 心細くも 思ひたつかな

すみがまの けぶり絶えたる 時にしも やくとこふこそ わりなかりけれ

すみがまの 口あけつれば いはずとも ひをへてもまた おこすばかりぞ

あとたえて さびしき宿の 冬の夜は やました風に とまらざりけり

しをれ蘆の ふし葉が下に あさりする 鴨のうきよを 流れてぞふる

をし鴨の かづく岩間の 薄氷 今朝や上毛の とぢかさぬらむ

夜を寒み 結ぶや 水鳥の かづく岩間の 関となるらむ

せきりせし 眞野のなからは こほりゐて いくひに波の こゑ絶えにけり

眞野の池に こほりしぬれば 葦間なる 橋もたづねて 島つたひしつ

飛鳥川 淵はに 閉じられて いかで風にも なりかはるべき