和歌と俳句

源俊頼

水上に もみぢ散るらし かみなびの いはせのさなみ くれなゐにたつ

山里は 柴のかこひの ひまをあらみ 入り来るものは 木の葉なりけり

はげしさの みやまあらしは 手もなきに いかで木の葉を こき散らすらむ

こがらしの はげしきうれに をりをりて 今日しももろき 紅葉をぞ見る

新古今集
日くるれば あふ人もなし まさき散る 峰の嵐の 音ばかりして

育みし こずゑさびしく なりぬらむ ははそのもりの 散りゆくみれば

いきもどれ 見てもしのばむ 夕されば 生田のもりに 木の葉散るなり

ひとり寝る ふせやのひまの しらむまで 荻の枯葉に 木の葉ちるなり

戸無瀬より 流す錦は 大堰川 筏につめる 木の葉なりけり

あらしとや 都の人は 思ふべき 紅葉の色を かたりちらさば

ふきまよふ 嵐のおとや わび人の 涙の玉のの をとはなるらむ

よしさらば 生ふるひつぢの かしげつつ ものにもならで 霜枯れねとや

誰にまた おもひ知らせむ 君待つと たたずむ庭の こがらしのこゑ

日をも夜を 過ぎがたしとや 思ふらむ いしらの瀬にも 網代うつなり

束の間に つもる網代の 木の葉にて 日を経てよらむ 程を知るかな

網代木の いかちもすまに よるひをば かきやる方も なき身なりけり

みとせまで 人もすさへぬ 錦木と 見れば網代の 木の葉なりけり

網代には 月の光も あるものを なにますらをの 篝焚くらむ

みやまには 嵐ふくらし 網代木に かきあへぬまで 紅葉つもれり