『古事記のものがたり』・本のできるまで
その16

「自分の本は自分で売ります。
 “古事記のものがたり”出版までの奮闘記その16



みどりさんは判っていない?

A ほんまにこんなことがあってもええんやろかぁ〜?
M あんまり話ができすぎていてこわいみたいやなぁ〜!
A.M 神さまぁ〜、古事記のものがたりを本にする仕事が終わりましたぁ〜。と報告したら「はい、それでは次の仕事ですよ!」という感じやもんナ。

ぼくたちは、事の成り行きに内心驚きながらもZさんからの仕事依頼を喜んで引き受けることにした。しかしよく考えてみると、ぼくたちはそのころまだ携帯電話を持っていなかったのだ。……、……(・・;)。

……なのに携帯電話の中に入れるゲーム性の高い楽しいコンテンツを作る仕事を二つ返事で引き受けてしまって「大丈夫だろうか?」

ぼくの心配をよそにみどりさんは「やったぁ〜! やっぱり神さんはいてはったぁ〜(訳:神は実在されていた)。私らに全国の神社に取材に行ける仕事までプレゼントしてくれはったぁ〜!」と、いつものようにノーテンキにはしゃぎまわっている。

いまでこそ、携帯電話のなかに占いやゲーム、待ち受けキャラ、メール機能その他にも便利な情報がいっぱい入っていて、どれをどんな風に利用したらいいのか迷ってしまうぐらいなのだが、この時はまだ携帯電話の普及率が低くて、よっぽど忙しいビジネスマンか贅沢な中高生がポケベル代わりに携帯を持っているぐらいだった。

それにぼくたちの仕事の納品先の某電話のシェアは○○に比べるとまだまだ少なかった。ぼくはもともとファンタジーの世界が好きなので剣と魔法の世界関係のゲームやシュミレーションゲームなどをあきるほどに遊んでいたが、みどりさんときたらそっち関係のことはまったく知らないのだ。

だから、よっぽど知恵をしぼって中高生が楽しんでやってくれるようなコンテンツを作らないと。企画原稿料や取材費をもらっていい加減な仕事はしたくない。

第一、携帯電話というもの自体どのような仕組みになっているのかみどりさんは理解しているのだろうか?

ぼくの不安をみどりさんに伝えると「大丈夫だよ、娘が(父親に買ってもらって)高校生の時から携帯を持っていたから、彼女にいろいろ参考意見を聞いてみるからね…」なんて相変わらず簡単に考えているようなのだ。

「それに、一年前にインターネットで「古事記のものがたり」の連載が終わった記念日にこの仕事が入ってきたなんて、すごいことやんか!」と相変わらず有頂天になってしまって問題の本質が見えていないようだ。

こんなときはみどりさんを当てにしていてもなんにも始まらないので、ぼくは仕方なくZさんがくれた「携帯電話のコンテンツ」の企画書をもう一度じっくり一人で読み直してみることにした。

それで、よくわかったのだが、この占いサイトはみんなにしあわせになってもらうお手伝いをするということがまず一番大事なコンセプトになっている。

それを見て取ったぼくは、「たんなる占いサイトというだけでなく、日本文化のすばらしさを伝えていきたいというぼくの想いも文章の中にほりこんでいきたい」と考えた。

このことをみどりさんに話すと、みどりさんは「やっぱり神さんのくれはる仕事はすごいなあ!」とすごくうっとりとした顔をした。まるで目の前の中空に神さまが浮かんでいて、その神さまに向かって微笑んでいるかのような。

そうではなくて、これからそのすばらしいサイトの中身を僕たちが企画して作成しなくてならない責任があるということをいまいち彼女は判っていないように思えたのだが。(~_~;)

とにかく一度引きうけた以上はごちゃごちゃ言っていても始まらない。ぼくは今までのネットゲームの経験と非常に高いIQを生かして、日本文化を子どもたちに伝えられて、楽しんでもらえるにはどんな中身にすればいいのかを、頭にハゲができるほど集中して考えることにした。

そのおかげで、「古事記のものがたり」の本が完成して家に届く三週間ほどの間、僕は時間をもてあますことも無く、(本のことは忘れて)この新しい仕事に熱中することができた。


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