雪中梅この旅白くなりにけり
雪中梅一切忘じ一切見ゆ
冬杉円錐尖塔かくし人影なし
余生のみ永かりし人よ虎落笛
大人等を見捨てし一童復活祭
厭人の果ての祈りも咳混り
黒き地や身を降る雪の打ちつけに
杭一本雪降る条々かぎりなし
かなたになやむ行人こなたただ飛雪
飛雪のいぶき十七音詩ただ一息
ただに素顔の青流沿へり深雪道
深雪降らしていま憩ふ空月と星
たべ物の切口ならび夜の深雪
沈丁や医家の灯なれど書斎の灯
床低きショーウィンドウに冬日溜る
如月や値札ふかぶか豆の中
梅の下墓地いま水に渇したり
梅を愛せし友よ遺骨の在処知れず
白梅や墓地へ波うち米搗く音
なまぬるき蜜柑相噛み血族沙汰
城中ふかく在るかに林檎のハイライト
春の鳩舞ひ返せども飛び去るなり
古き鳥鳶もとまりて百千鳥
彼岸の雀よ他界想はで他界せしは
仔猫の斑夕月の斑とにほやかに