かぶりものはきもの捨てて耕し初む
四月の詩銭妻つつましく市に食ぶ
落花の下酬はれざらむと妻に語る
花冷や明日へ急がんこころもなく
八重桜湯へ行く人の既に潔し
山ざくら父子の名前に蛇と龍と
金髪にちかき耕馬や瞳黒く
耕馬の日雲がよそほふ山の形
榛の芽や家の辺深田乾く音
白き胸あかきのどより燕の歌
野の農夫活かす血真赤か鯉幟
矢車の影や砌の上で舞ふ
母の日や大きな星がやや下位に
蝙蝠飛ぶよ己が残影さがしつつ
麦の秋答へたがつて長答
針仕事針先かすかな遠雲雀
金銀花妻子のためには酬はれたし
折鶴にとまりし蠅やいま健か
鰺を焼くにほひと暮るる「日めくり」と
つばめの歌結尾一音はじけたり
為し得る故に為さざる非行岩根薔薇
汗が糸ひく紅を血と拭きチンドン屋
チンドン屋前後の荷解き緑蔭へ
チンドン屋緑蔭に吐息紅脚絆
チンドン屋緑蔭いざ発巷入り