父を恋ふ心小春の日に似たる
風の日は雪の山家も住み憂くて
天地の色なほありて寒牡丹
覆とり互いに見ゆ寒牡丹
とり落す物うらめしや悴む手
悴みてうつむきて行きあひにけり
霜やけの手にする布巾さばきかな
霜やけの手を互に見目をそらし
はねかへす霰の脚の面白き
いづくとも無く風花の生れ来て
風花の土に近づき吸ひつきて
外に立ちて氷柱の我が家侘しと見
山の雪胡粉をたたきつけしごと
いくばくの寒さに耐ゆる我身かも
訪ひ来るや雪の門より人つづき
冬籠障子隔てゝ人の訪ふ
小包で届く薬や冬籠
寒燈の下に文章口授筆記
探梅や序でに僧に届けもの
水仙や母のかたみの鼓箱
何物かつまづく辻や厄落し
我行けば枝一つ下り寒鴉
見下ろしてやがて啼きけり寒鴉
針金にひつかゝりをる雪の切れ
鎌倉は今笹鳴に冬椿
道ばたの雪の伏屋の鬼やらひ
一百に足らず目出度し年の豆
節分や鬼もくすしも草の戸に