和歌と俳句

高浜虚子

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父を恋ふ心小春の日に似たる

風の日は雪の山家も住み憂くて

天地の色なほありて寒牡丹

覆とり互いに見ゆ寒牡丹

とり落す物うらめしや悴む手

悴みてうつむきて行きあひにけり

霜やけの手にする布巾さばきかな

霜やけの手を互に見目をそらし

はねかへす霰の脚の面白き

いづくとも無く風花の生れ来て

風花の土に近づき吸ひつきて

外に立ちて氷柱の我が家侘しと見

山の雪胡粉をたたきつけしごと

いくばくの寒さに耐ゆる我身かも

訪ひ来るや雪の門より人つづき

冬籠障子隔てゝ人の訪ふ

小包で届く薬や冬籠

寒燈の下に文章口授筆記

探梅や序でに僧に届けもの

水仙や母のかたみの鼓箱

何物かつまづく辻や厄落し

我行けば枝一つ下り寒鴉

見下ろしてやがて啼きけり寒鴉

針金にひつかゝりをる雪の切れ

鎌倉は今笹鳴に冬椿

道ばたの雪の伏屋の鬼やらひ

一百に足らず目出度し年の豆

節分や鬼もくすしも草の戸に