世の中を遊びごゝろや氷柱折る
溝板の上をつういと風花が
磐石の尻を据ゑたる冬籠
もてなしは門辺に焚火炉に榾火
火鉢に手かざすのみにて静かに居
旅鞄そのまゝ座右に冬籠
山の日は鏡の如し寒櫻
水の上をすれすれに鴨渡りけり
枯萩にわが影法師うきしづみ
手あぶりの僧に火鉢の俗対し
エレベーターどかと降りたる町師走
二冬木立ちて互にかゝはらず
冬籠人を送るも一事たり
風花に山家住居もはや三年
凍道を小きざみに突く老の杖
御馳走の熱き炬燵に焦げてをり
庭に下り四五歩歩くや冬籠
冬晴や立ちて八ヶ岳を見浅間を見
蓼科に片雲もなし冬の晴
干足袋も裏返されて突つ張りて
耳をなで額をこすり日向ぼこ
北風寒しだまつて歩くばかりなり
寒風に向ひて老を忘れをり
水仙の一花心のままにいけ