春の雁総羽つくろひつやつやと
うら白の尾ふり堅田の春の雁
白雁はげに天かへるあまつ雁
春雁や渺茫と枯るる蘆の中
丹さすもの茨のしもとや春の雁
雪にねぶり日にめざめ幾夜はるの雁
枯れ折れて葉白き蘆や春の雁
よく見れば昼月虧けて雁帰る
水むいてあしあとひろし春の雁
蹼にふむは薺か春の雁
あしあとに菫香ぞあれ春の雁
春雁にふまれてをかしかへろつぱ
海もなき国住人にはるの雁
去ぬる雁鋤田の畦にならびけり
もろむきに蹼ひろし春の雁
はなぎはの白に日させば春の雁
畦にあれば鵠も帰雁のたぐひかな
雁とてもいろいろありぬ去ににけり
踏みはづす蹼もなく雁発ちぬ
雁金の腹白妙に去ぬけしき
たつ雁となりても人を窺へる
鶴舞うて引く機もしる春の雁
老雁は聖のごとく去りにけり
ゆく雁や百千の月日千万の雲
春雁や富士をつつめる湖いくつ