和歌と俳句

原 石鼎

20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

春の雁総羽つくろひつやつやと

うら白の尾ふり堅田の春の雁

白雁はげに天かへるあまつ雁

春雁や渺茫と枯るる蘆の中

丹さすもの茨のしもとや春の雁

雪にねぶり日にめざめ幾夜はるの雁

枯れ折れて葉白き蘆や春の雁

よく見れば昼月虧けて雁帰る

水むいてあしあとひろし春の雁

蹼にふむは薺か春の雁

あしあとに菫香ぞあれ春の雁

春雁にふまれてをかしかへろつぱ

海もなき国住人にはるの雁

去ぬる雁鋤田の畦にならびけり

もろむきに蹼ひろし春の雁

はなぎはの白に日させば春の雁

畦にあれば鵠も帰雁のたぐひかな

雁とてもいろいろありぬ去ににけり

踏みはづす蹼もなく雁発ちぬ

雁金の腹白妙に去ぬけしき

たつ雁となりても人を窺へる

鶴舞うて引く機もしる春の雁

老雁は聖のごとく去りにけり

ゆく雁や百千の月日千万の雲

春雁や富士をつつめる湖いくつ