日に向いて枝相似たる桜かな
花びらの濡れずに浮きて流れけり
常の日を子等着飾れる桜かな
昨日よりけふ濃く見する桜かな
濡れ色にくらき枝なる桜かな
濃まさりて西へより居り花の雲
逆枝の団々として八重桜
筋塀や月とほのめく八重桜
髪洗うて仰ぐ日空や八重桜
子に戯れて髪おつさばへ八重桜
八重桜盛りの後をおもひけり
潮沫の這ひひろみよる落花かな
老いぬるもちるや残花にひびきあり
霜除けの洒れ乾けるをかいとりぬ
これははやも白木蓮の蕾かな
もくらんの濃く静かなる夜明かな
木蘭はむらさき籬はみどりかな
桜散り桃もくらんのさかりかな
春の夜のこの玉の緒を暁かけて
登上曲ピアノに得たり夜半の春
地に居りし蝶たちよりて朧かな
野の水と夕べの星と朧かな
櫓も棹も胴間に濱の朧かな
苫脇へ揚げし櫓濡れて朧かな