和歌と俳句

山口草堂

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少年工建国祭の鐘打てり

硫黄つむ冬日にゐつゝ飯食へり

枯原の午後空電車よぎるなり

出勤の靴に凍草きらきらす

春暁の橋を風塵わたるなり

立春の土手は日向のはしり来る

秋日照る波野明暗の起伏せり

放牛に睨められ憩ふ秋の風

芒原人声ふかく風わたり

尻赤の牛曳かれゆき夕霧らふ

仔馬駈け童が駆ける露の径

芒原あかるし牛の貌がのぞき

空谿の奥は芒のひかるのみ

ひとりゆけば芒のひかり空のひかり

萱を負ふ牛下りゆき誰も来ぬ

われに靡き空の奥へとなびく芒

萱の径熔岩の径ゆき天ふかく

萱にすがり水奔りたる跡を攀づ

秋天に入りて山巓牙と研がれ

霧の上の嶺巻雲を交叉せり

雲霧を抜きて噴煙黄に崩れ

火の山の草原露の玉なせり

天ちかき花野踏みゆくに平らなる

火の山の熔岩の褐色露を結はず

霧の熔岩からびし音に踏みゆけり

火山灰の原霧はゆく人にまとふなり

噴煙と霧にむせびし顔黄なり

火山灰降れり双手は霧にしめりたる

ほくほくと火山灰踏む音の霧ごもり

火口丘匍ひゆく霧を追ひのぼる

霧を来て火口の底に見し紅蓮

霧の火口茫々と影のなきおのれ

火口壁赭し微塵の霧が匍ふ

鳴りとよむ火口に霧の巻くしづけさ

火口より噴きあぐる霧の空あかき

霧の火口見知らぬ人に声かけられ

火口見し眼につんつんと萱の青

萱山はからりと白き雲浮ぶ

萱を刈る人の会釈に逢ひし尾根

萱刈に萱を食みつゝ従ける牛

萱刈に蒼空火山灰を降らしける

萱山に憩ひ莨の火を眺む