よみ人しらず
旅ゆかば袖こそぬるれもる山のしづくにのみはおほせざらなん
兼盛
潮みてる ほどにゆきかふ 旅人や 濱なの橋と なづけそめけん
貫之
雨によりたみののしまをわけゆけど名にはかくれぬ物にぞありける
伊勢
郭公ねぐらながらのこゑきけは草の枕ぞ露けかりける
能宣
草枕我のみならず雁がねも旅の空にぞなき渡るなる
よみ人しらず
君をのみこひつつ旅の草枕つゆしげからぬあか月ぞなき
兼盛
はるかなる旅の空にもおくれねばうらやましきは秋の夜の月
能宣
をみなへし我にやどかせいなみののいなといふともここをすぎめや
重之
ふなぢには草の枕も結ばねばおきながらこそ夢も見えけれ
ゆげのよしとき
おもひいてもなきふるさとの山なれどかくれゆくはたあはれなりけり
贈太政大臣道真
君がすむやどのこずゑのゆくゆくとかくるるまでにかへりみしはや
かさのかなをか
浪のうへに見えしこじまのしまかくれゆくそらもなし君にわかれて
人麿
あまとぶや雁のつかひにいつしかも奈良のみやこにことつてやらん