春とても はなのたもとに あらぬ身は 衣かへ憂き こともなきかな
たれにかは 来ても見よとは 告げやらむ わが身のためと 咲ける卯の花
神山の しるしとおもへば けふことに 葵のかつら せぬ人ぞなき
おもひいでに 人づてならで ほととぎす まづ初声を われにきかせよ
年毎に 引けど尽きせぬ ものはさは あやめの長き 根にこそありけれ
のこりたは そしろにすきし あすはただ ゆひもやとはで 早苗とりてむ
ともしすと 鹿にもあはぬ ものゆゑに こぐれの下に 夜を明かしつる
五月雨は ひかずふれども わたのへの 大江の岸は ひたらざりけり
軒ちかき 花たちばなの うつり香に つつまぬ袖も 人ぞあやむる
流れゆく 川辺にすだく 蛍をば いさごにまじる 玉かとぞみる
いなしきの とこぞとはげに いひながら 蚊遣火たてぬ しづがやぞなき
ふたつなき 法のたとへに とるのみか はちすは人の 心とぞきく
冬さむみ いてし氷を うづみおきて はや氷室とは いふにぞありける
真清水の みれば涼しく おぼえつつ むすばでただに すぐしつるかな
千歳まで 人ながらめや 水無月の 三たび菅抜き 祈る禊に