吉野川いはとがしはをこす波のときはかきはぞわが君の御代
鈴鹿川やそせふみわたるみてぐらも君が代長く千代のなが月
天のはら富士のしば山しばらくも烟たえせず雪もけなくに
いかばかり深き中とてかへる山かさなる雪をとへと待つらむ
うばたまの夜わたる月のすむ里はげに久方のあまのはしだて
さざれ石巌となりてあすか川ふち瀬の聲を聞かぬ御代かな
末とほき鳥羽田のみなみしめしより幾世の花にみ雪降るらむ
敷島のみちにわが名は辰の市やいさまだ知らぬ大和言の葉
越す波にわが身吹飯のうらみきてうちぬる夢もこのころぞ見る
布引のたきにたもとをあらそひて我が年波のいづれたかけむ
さもあらばあれ名のみ長柄の橋柱くちずば今の人もしのばじ
てづくりやさらすかきねのあさ露を貫きとめぬ玉がはのさと
何故か底のみるめもおふの浦あふことなしの名には立つらむ
関の戸をさそひし人は出でやらで有明の月のさよのなかやま
結びおきし秋の嵯峨野のいほりより床は草葉の露になれつつ
水茎のあとかきながすすみだ川ことづてやらむ人もとひこず
はれぬまにまづ朝霧を立ちこめて飾磨の市に出づる里びと
より来べきかたもなぎさのもしほ草かきつくしてしわかの浦波
君になほあふ坂山もかひぞなきすぎのふる葉に色し見えねば
待ちこひしむかしは今も忍ばれてかたみさびしきみつの濱松