和歌と俳句

山口誓子

雪嶽

茶畑は匐ふ虫縦に横に匐ふ

トンネルの口に茶畠畝を垂れ

雛段の高きへ登る紅き階

内裏雛背に小金屏大金屏

燕にも美しき天紫雲天

蜆船曲り江をよき漁場として

椿林不増不滅の泉湧く

完全円椿林の洩れ日みな

陣笠を冠れ乱るる青柳

仏足の法輪の上花楓

ゲレンデの夏は火山の砂礫帯

ゲレンデの夏静止せるリフト惨

吹流し五月の風を蹴りに蹴る

山の名は白七月も雪残る

雲の峰城砦をなす塔をなす

夕立に千体仏の濡れ同じ

雲海に尖る高嶺は修験山

日本を縦貫青き馬の背が

早苗田の青増す早苗伸びしだけ

弥陀の滝先に一念凝らし落つ

白滝が落つ原始林両分けて

走り水河鹿はこころよしと鳴く

菩提樹の緑有縁に蔭与ふ

花桐の十方鐘の音響く

葛のため更に低頭今年竹