安法法師
夏衣まだひとへなるうたたねに心してふけ秋のはつ風
よみ人しらず
秋はきぬ竜田の山も見てしがなしぐれぬさきに色やかはると
貫之
荻の葉のそよぐ音こそ秋風の人にしらるるはじめなりけれ
恵慶法師
八重葎しげれるやどの寂しきに人こそ見えね秋はきにけり
安貴王
秋立ちていく日もあらねどこのねぬるあさけの風はたもとすずしも
躬恒
彦星の妻まつよひの秋風に我さへあやな人ぞこひしき
人麿
あまの河とほき渡にあらねども君がふなでは年にこそまて
人麿
天の河こぞの渡のうつろへばあさせふむまに夜ぞふけにける
よみ人しらず
さ夜ふけてあまの河をぞ出でて見る思ふさまなる雲や渡ると
湯原王
彦星の思ひますらん事よりも見る我くるしよのふけゆけば
人麿
年に有りて一夜いもにあふ彦星も我にまさりて思ふらんやそ
貫之
ひととせにひとよとおもへどたなばたのあひ見む秋の限なきかな
恵慶法師
いたづらにすぐる月日をたなばたのあふよのかずと思はましかば
元輔
いとどしくいも寝ざるらんと思ふかなけふのこよひにあへるたなばた
よみ人しらず
あひ見てもあはでもなげくたなばたはいつか心ののどけかるべき
よみ人しらず
わがいのる事はひとつぞ天の河そらにしりてもたかへさらなん
よみ人しらず
君こずば誰に見せましわがやどの垣根にさける槿の花
よみ人しらず
女郎花おほかる野辺に花すすきいづれをさしてまねくなるらん