和歌と俳句

藤原親隆

塩木つむ あまのかまやに 雪ふりて たつけぶりさへ しめらひにけり

宮木ひく 朽ち木の杣の 山いだし 雪消えばとや 思ひたつらむ

この頃は うづらのねやも 冴えけらし 刈田の畔に 雪はふりつつ

難波江の 葦のあさ葉の しづれこそ 下はふ鴛の 上着なりけれ

かきつけし しづのまつかき 花さくと 見ゆるは雪の 降れるなりけり

東路や 伊吹おろしの 激しさに のがみの里に 吹雪しにける

朝まだき まやの板戸を あけたれば すずの割れより 雪ぞ散り来る

はこの池の 氷の上に 降る雪は 鏡に塵の ゐるかとぞみる

はづかしや 園に車の 牛よわみ 雪つみぬれば 引きぞわづらふ

いか様に 云ひ出でましと 思ふ間に むせびてのみも 過ぐすころかな

水茎の うかりし跡と みなせども いとど涙の 流れそふかな

たづぬるに 有りとしきけば なぐさみぬ うれしけもなき けはひなれども

石見潟 島隠れゆく 藻刈舟 見あへぬ程に 何こがるらむ

島なびく 沖のしらいし しらなみの をりをり見ても 濡るる袖かな

いかにせむ 逢ふこと難き ははきぎの そのはらぞとは 知らするものを

からころも 夜毎にきては 重ぬれど まだ胸あはぬ ものをこそ思へ

嘆きつつ 逢はで日頃の ふるままに 涙の色の まさりゆくかな

せなかなき そのひまひまに 尋ねあひて これをいみじと 何思ふらむ

逢ふことは たえにしものを さねかづら またいかにして 苦しかるらむ