惜しみかね はないろ衣 ぬぎかへて けさより風の たつをまつかな
卯の花の しららに咲ける 夕暮れは しづが垣根ぞ 月夜なりける
神山の 園の葵を くさりつつ けふのみあれに かざしつるかな
わがやどの 松のけしきや しるからむ 山ほととぎす をちかへり鳴く
こなぎつむ 深田の代は 掻きてけり 急ぎて植ゑよ むろのはやわせ
あひづ山 裾野の原に ともしすと 火串に火をぞ かけあかしつる
ひさかたの あままもみえぬ 五月雨に みくまの菅も かりほしかねつ
あるがうへに 花の咲きそふ たちばなは さつきのたまに 貫かむためなり
うさや川 やそとものをの 篝火に まがふは小夜の 蛍なりけり
やまがつの やどにたえせず おく蚊火の したもえにのみ 過ぐるころかな
なつのいけの はちすのつゆを みるからに こころぞことに 涼しかりける
つげの野に 大山守が をさめたる 氷室ぞ今も 絶えせざりける
かげみれば やや白波の よするかな いたゐの清水 むすぶしづくに
やほよろづ 神も夏越に なりぬらむ けふ菅抜きの 禊しつれば