なき人を數ふる秋の夜もすがらしをるる袖や鳥辺野の露
はかなしやあだに命の露消えて野邊にや誰もおくりおかれん
道変るみゆきかなしきこよひかな限りの旅と見るにつけても
松山の波に流れて来し舟のやがて空しくなりにけるかな
憂き世とて月すまずなる事もあらばいかがはすべき天の下人
ながらへて誰かはさらにすみとげむ月隠れにし憂き世なりけり
新古今集・恋
身を知れば人のとがとも思はぬに恨みがほにも濡るる袖かな
中々になれぬ思ひのままならば恨みばかりや身に積らまし
新古今集・恋
あはれとて訪ふ人のなどなかるらん物思ふ宿の荻の上風
新古今集・恋
思ひ知る人有明の世なりせば尽きせず身をば恨みざらまし
千載集・恋
逢ふと見しその夜の夢の覚めであれな長きねぶりは憂かるべけれど
あはれあはれこの世はよしやさもあらばあれ来む世もかくや苦しかるべき
君はまづ憂き世の夢の覚めぬとも思ひあはせむ後の春秋
春秋を君思ひ出でば我はまた花と月とにながめおこせん