和歌と俳句

源氏物語の中の短歌

東屋

見し人のかたしろならば身に添へて恋しき瀬々のなでものにせん

みそぎ河瀬々にいださんなでものを身に添ふかげとたれか頼まん

しめゆひし小萩が上もまよはぬにいかなる露にうつる下葉ぞ

宮城野の小萩がもとと知らませばつゆも心を分かずぞあらまし

ひたぶるに嬉しからまし世の中にあらぬ所と思はましかば

うき世にはあらぬ所を求めても君が盛りを見るよしもがな

絶えはてぬ清水になどかなき人の面影をだにとどめざりけん

かたみぞと見るにつけても朝霧の所せきまで濡るる袖かな

やどり木は色変はりぬる秋なれど昔おぼえて澄める月かな

里の名も昔ながらに見し人の面がはりせる閨の月かげ