見し人のかたしろならば身に添へて恋しき瀬々のなでものにせん
みそぎ河瀬々にいださんなでものを身に添ふかげとたれか頼まん
しめゆひし小萩が上もまよはぬにいかなる露にうつる下葉ぞ
宮城野の小萩がもとと知らませばつゆも心を分かずぞあらまし
ひたぶるに嬉しからまし世の中にあらぬ所と思はましかば
うき世にはあらぬ所を求めても君が盛りを見るよしもがな
絶えはてぬ清水になどかなき人の面影をだにとどめざりけん
かたみぞと見るにつけても朝霧の所せきまで濡るる袖かな
やどり木は色変はりぬる秋なれど昔おぼえて澄める月かな
里の名も昔ながらに見し人の面がはりせる閨の月かげ