鳴く声も聞こえぬ虫の思ひだに人の消つには消ゆるものかは
声はせで身をのみこがす蛍こそ言ふよりまさる思ひなるらめ
今日さへや引く人もなき水隠れに生ふるあやめのねのみ泣かれん
あらはれていとど浅くも見ゆるかなあやめもわかず泣かれけるねの
その駒もすさめぬものと名に立てる汀の菖蒲今日や引きつる
にほ鳥に影を並ぶる若駒はいつか菖蒲に引き別るべき
思ひ余り昔のあとを尋ぬれど親にそむける子ぞ類ひなき
古き跡を尋ぬれどげになかりけりこの世にかかる親の心は