花の香は散りにし袖にとまらねどうつらん袖に浅くしまめや
花の枝にいとど心をしむるかな人のとがむる香をばつつめど
うぐひすの声にやいとどあくがれん心しめつる花のあたりに
色も香もうつるばかりにこの春は花咲く宿をかくれずもあらなん
うぐひすのねぐらの枝も靡くまでなほ吹き通せ夜半の笛竹
心ありて風のよぐめる花の木にとりあへぬまで吹きやよるべき
かすみだに月と花とを隔てずばねぐらの鳥もほころびなまし
花の香をえならぬ袖に移してもことあやまりと妹や咎めん
めづらしとふるさと人も待ちぞ見ん花の錦を着て帰る君
つれなさは浮き世の常になり行くを忘れぬ人や人にことなる
限りとて忘れがたきを忘るるもこや世に靡く心なるらん