和歌と俳句

源氏物語の中の短歌

横笛

世を別れ入りなん道は後るとも同じところを君も尋ねよ

うき世にはあらぬところのゆかしくて背く山路に思ひこそ入れ

憂きふしも忘れずながらくれ竹の子は捨てがたき物にぞありける

ことに出で言はぬを言ふにまさるとは人に恥ぢたる気色とぞ見る

深き夜の哀ればかりは聞きわけどことよりほかにえやは言ひける

露しげき葎の宿にいにしへの秋に変はらぬ虫の声かな

横笛の調べはことに変はらぬをむなしくなりし音こそ尽きせぬ

笛竹に吹きよる風のごとならば末の世長き音に伝へなん