みちのくの雪降る町の夜鷹蕎麦
寒紅をときて染めたる薬指
蕭条と枝垂桜の枯れにけり
枯芭蕉日に日に朽ちて行きにけり
ころころと鳴り出す釜や吸入器
吸入の妻が口開け阿呆らしや
吸入の露を置きたる睫かな
大根干澄めば忽ち夷講
いつまでも下る千生瓢冬の雨
おでん屋の屋台の下の秋田犬
籠の中柚子湯の柚子とほうれん草
真青な柊挿せる軒端かな
みちのくはまだまだ冬や猪を売る
上の橋下の橋あり雪の町
搗きまはり来て照らしたる氷柱かな
終日やかさりこそりと萩落葉
冬めきて大根の葉の流るゝ日
落葉焚く山の方へと上りけり
燃え上る枯蔓の種燃えて落つ
鶏頭の枯れはてたれど紅すこし
鷺の蓑すこしみだるゝ寒の雨
立ち枯るゝものに玉露冬の雨
万年青の実赤しと思ふ冬至かな
万両にうすき日ざしや煤払
冬至梅暖炉の側でふくらみぬ