山口青邨

木瓜も咲き春のごとくに火桶かな

柊を挿すひびも古り軒柱

田にうつる追儺の寺の灯かな

極月の人々人々道にあり

一茎の水仙一塊の冬菜かな

寒牡丹雪舟の奇峯雪をかつぐ

高く上がる煙草のけむり冬紅葉

息白き人重つて来りけり

伊豆の湯はうつくしかりし年忘

枯れて立つもの岐嶇として霜置きぬ

おろかなる犬吠えてをり除夜の鐘

つがひ田に下り童注進を

枕屏風白き短冊あはれなり

南部富士けふ厳かに頬被り

小倉山松ゆれてをり時雨来む

縁の下一俵のを蔵したり

落葉踏む女の踵見て歩く

尼僧は剪る冬のさうびをただ一輪

降誕祭待つ燭こよひともすなり

クリスマス近づく雪のこよひまた

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