和歌と俳句

原 石鼎

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みちのくは百合の朱さと草の青

百合の朱野躑躅の朱高さかな

雨の牡丹花瓣からも滴かな

あるがなかの白き牡丹や雨の中

牡丹に夜はなほ寄る炉ありけり

壁のばらにあたりしすぽんぢぼうるかな

籠のばらを蔽ふりぼんもばらの色

薔薇の月つとまぼろしにEndymion

牡丹の畑の畝間を行かうとす

高ひくの蕗の葉に来しあさ日かな

枝垂桜地につくまでの若葉かな

梨花一房まぎれもやらず初若葉

青天にみんな穂をあげ初若葉

ほのぼのと降る雨にこそ初若葉

雨の日を炭つぎたてぬ初若葉

ぬぎためし曠着の裏や初若葉

花ぬらしし雨のそのまま初若葉

大いなる落花地にあり初若葉

あけくれをこもらひ居れば初若葉

桐若葉出る葉出る葉の全けれ

廊を拭くおから袋や時鳥

新緑にひと日なつかし那須の雨

新緑を追ふ旅をしてもどりけり

新緑の梅雨にはいまだ日あるべし

呼びたてぬ庭の新緑これを見よと