和歌と俳句

伊勢

拾遺集・物名
わたつ海のおきなかにひのはなれいでてもゆと見ゆるはあまのいさりか

拾遺集・雑
雲井にてあひ語らはぬ月だにも我が宿過ぎてゆく時はなし

拾遺集・雑
音羽河せき入れておとす滝つ瀬に人の心の見えもする哉

拾遺集・雑
海にのみひちたる松の深緑いくしほとかは知るべかるらん

拾遺集・雑
木にも生ひず羽も並べでなにしかも浪路へだてて君を聞くらん

拾遺集・雑
そら目をぞ君はみたらし河の水浅しや深しそれは我かは

拾遺集・恋
年月の行くらん方もおもほえず秋のはつかに人の見ゆれば

拾遺集・恋
思ひきや逢ひ見ぬほどの年月を數ふばかりにならん物とは

拾遺集・恋
遥なる程にもかよふ心かな さりとて人のしらぬものゆゑ

拾遺集・恋
さもこそは あひ見むことの かたからめ 忘れずとだに いふ人のなき

拾遺集・雑賀
はるばると雲井をさして行舟の行末遠く思ほゆるかな

拾遺集・雑恋
我こそは にくくもあらめ わがやどの 花見にだにも 君がきまさぬ

拾遺集・哀傷
亡き人もあるがつらきを思にも色分れぬは涙なりけり

拾遺集・哀傷
しでの山越えて来つらん郭公恋しき人の上語らなん