神さびて いはへる鉾の 見ゆるかな こは四方山の 人の守りか
いにしへも 祀れるをりは 毛衣に 朱の衣を 着ると云ひけり
親しきも 疎きもいはず 世の中に 心のゆかぬ 人のなきかな
さかえゆく つかさくらゐは 高浜の 千歳の春を まつとしらなむ
とにかくに 心は三世に わかるれど 家は一つの 仏なりけり
なにとてか むなしからぬと 思ふこそ まことは法の 心なりけり
いさぎよく おもふ心の 深からば 誰れか憂き世に おもひとまらむ
極楽と きくに心の ゆきぬれば 誰れか憂き世に おもひとまらむ
補陀落の み山隠れに 年を経て すむらむ月を おもひこそやれ
おもへただ 水泡なす身の はかなさは あるかとみれば 消えぬるものを
春は萌え 秋は散りぬる ここちして 木の葉よりげに 脆き命か
遅れゐて おもひおこせよ あかなくの わかるる道に 迷ふ心を
道遠み 駒ひきとめて 逢坂の 関の清水に しばし水かへ
いとなみに 柴をりかくる 仮の庵の 軒にひき干す 旅の衣か
大伴の 松のはひ根を 枕にて 高師の浜に まろねしてけり
旅寝して つかれにけりな 左手の 弓とるかたの たゆくなるかな
こひせぬに 袖ぞ露けき 武蔵野の 浅茅おしなひ さぬる夜すがら
ひとなみに ももうたよむと いかにせむ 才覚もなき わが身とおもへば
冬寒み 小夜もふけひの 浦風に 島わたりする 舟や出づらむ
詞花集・雑歌
くもゐより つらぬきかくる 白玉を たれぬのひきの瀧といひけむ
千載集・神祇
神世より 津守の浦に 宮居して 経ぬらん年の 限り知らずも
新古今集・冬
あたらしき 年やわが身を とめくらむ 隙行く駒に 道を任せて
新勅撰集・恋
あふさかの せきのせきもり こころあれや いはまのしみづ かげをだにみむ
続後撰集・秋
露ふかき 秋ののはらの かり衣 ぬれてぞそむる 萩が花ずり