和歌と俳句

万葉集

巻第三

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   柿本朝臣人麻呂献新田部皇子歌一首并短歌

 柿本朝臣人麻呂、新田部皇子に献る歌一首并せて短歌

八隅知之 我大王 高輝 日之皇子  茂座 大殿於 久方 天伝来  白雪仕物 往来乍 益及常世

やすみしし 我が大王 高ひかる 日の皇子  敷きいます 大殿の上に 久方の 天伝ひ来る  雪じもの 行き通ひつつ いや常世まで

   反歌一首 
矢釣山木立不見落乱雪驪朝楽毛

矢釣山木立も見えず降りまがふ雪に騒げる朝楽しも

   従近江国上来時 刑部垂麻呂作歌一首 
馬莫疾打莫行気並而見弖毛和我帰志賀尓安良七国

   近江国より上り来る時に、刑部垂麻呂が作る歌一首 
馬ないたく打ちてな行きそ日並べて見ても我が行く志賀にあらなくに

   柿本朝臣人麻呂従近江国上来時 至宇治河辺作歌一首 
物乃部能八十氏河乃阿白木尓不知代経浪乃去辺白不母

   柿本朝臣人麻呂、近江国より上り来る時に、宇治河の辺に至りて作る歌一首 
もののふの八十宇治川の網代木にいさよふ浪の行くへ知らずも