ますらをの弓木振り起し射つる矢を後見む人は語り継ぐがね
塩津山打ち越え行けば我が乗れる馬ぞつまずく家恋ふらしも
万葉集・巻第四
後れ居て恋ひつつあらずは紀伊の国の妹背の山にあらましものを
万葉集・巻第四
我が背子が跡踏み求め追ひ行かば紀の関守い留めてむかも
万葉集・巻第四
天雲の外に見しより我妹子に心も身さへ寄りにしものを
万葉集・巻第四
今夜の早く明けなばすべをなみ秋の百夜を願ひつるかも
年のはにかくも見てしかみ吉野の清き河内のたぎつ白波
山高み白木綿花に落ちたぎつ滝の河内は見れど飽かぬかも
神からか見が欲しからむみ吉野の滝の河内は見れど飽かぬかも
み吉野の秋津の川の万代に絶ゆることなくまたかへり見む
泊瀬女の造る木綿花み吉野の滝の水沫に咲きにけらずや
万代に見とも飽かめやみ吉野のたぎつ河内の大宮ところ
皆人の命も我れもみ吉野の滝の常磐の常ならぬかも
荒野らに里はあれども大君の敷きます時は都となりぬ
海人娘女棚なし小舟漕ぎ出らし旅の宿りに楫の音聞こゆ
玉藻刈る海人娘子ども見に行かむ舟楫もがも波高くとも
行き廻り見とも飽かめや名寸隅の舟瀬の浜にしきる白波
波の上ゆ見ゆる小島の雲隠りあな息づかし相別れなば
たまきはる命に向ひ恋むゆは君が御船の楫柄にもが
草枕旅行く人も行き触ればにほひぬべくも咲ける萩かも
伊香山野辺に咲きたる萩見れば君が家なる尾花し思ほゆ