和歌と俳句

笠 金村

笠金村歌集に出づと記されている歌

高円の野辺の秋萩いたづらに咲きか散るらむ見る人なしに

御笠山野辺行く道はこきだくも茂り荒れたるか久にあらなくに

高円の野辺の秋萩な散りそね君が形見に見つつ偲はむ

御笠山野辺ゆ行く道こきだくも荒れにけるかも久にあらなくに

越の海の手結が浦を旅にして見れば羨しみ大和偲ひつ

石上乙麻呂
大船に真楫しじ貫き大君の命畏み磯廻するかも

作者不詳
物部の臣の壮士は大君の任けのまにまに聞くといふものぞ

大君の境ひたまふと山守据ゑ守るといふ山に入らずはやまじ

見わたせば近きものから岩隠りかがよふ玉を取らずはやまじ

韓衣着奈良の里の夫松に玉をし付けむよき人もがも

さを鹿の鳴くなる山を越え行かむ日だにや君がはた逢はずあらむ

 神亀五年戊辰の秋八月

み越道の雪降る山を越えむ日は留まれる我れを懸けて偲はせ

 天平元年己巳の冬十二月の歌

布留山ゆ直に見わたす都にぞ寐も寝ず恋ふる遠くあらなくに

我妹子が結ひてし紐を解かめやも絶えば絶ゆとも直に逢ふまでに