後将見跡君之結有巌代乃子松之宇礼乎又将見香聞
後見むと君が結べる岩代の小松がうれをまたも見むかも
三吉野之御船乃山尓立雲之常将在跡我思莫苦二
み吉野の三船の山に立つ雲の常にあらむと我が思はなくに
天海丹雲之波立月船星之林丹榜隠所見
天の海に雲の波立ち月の舟星の林に漕ぎ隠る見ゆ
痛足河河浪立奴巻目之由槻我高仁雲居立有良志
穴師川川波立ちに巻向の弓月が岳に雲居立てるらし
足引之山河之瀬之響苗尓弓月高雲立渡
あしひきの山川の瀬の鳴るなへに弓月が岳に雲立ちわたる
動神之音耳聞巻向之檜原山乎今日見鶴鴨
鳴る神の音のみ聞きし巻向の檜原の山を今日見つるかも
三毛侶之其山奈美尓兒等手乎巻向山者継之宣霜
みもろのその山なみに子らが手を巻向山は継ぎしよろしも
我衣色取染味酒三室山黄葉為在
我が衣色とり染めむ味酒三室の山は黄葉しにけり
巻向之病足之川由往水之絶事無又反将見
巻向の穴師の川ゆ行く水の絶ゆることなくまたかへり見む
黒玉之夜去来者巻向之川音高之母荒足鴨疾
ぬばたまの夜さり来れば巻向の川音高しもあらしかも疾き
古尓有険人母如吾等架弥和乃檜原尓挿頭折兼
いにしへにありけむ人も我がごとか三輪の檜原にかざし折りけむ
往川之過去人之手不折者裏觸立三和之檜原者
行く川の過ぎにし人の手折らねばうらぶれ立てり三輪の檜原
網引為海子哉見飽浦清荒磯見来吾
網引きする海人とか見らむ飽の浦の清き荒磯を見に来し我れを