石川啄木

十一 十二 十三 十四 十五

東海の小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる

頬につたふ なみだのごはず 一握の砂を示しし人を忘れず

大海にむかひて一人 七八日 泣きなむとすと家を出でにき

いたく錆びしピストル出でぬ 砂山の 砂を指もて掘りてありしに

ひと夜さに嵐来りて築きたる この砂山は 何の墓ぞも

砂山の砂に腹這ひ 初恋の いたみを遠くおもひ出づる日

砂山の裾によこたはる流木に あたり見まはし 物言ひてみる

いのちなき砂のかなしさよ さらさらと 握れば指のあひだより落つ

しつとりと なみだを吸へる砂の玉 なみだは重きものにしあるかな

大という字を百あまり 砂に書き 死ぬことをやめて帰り来れり

目さまして猶起き出でぬ児の癖は かなしき癖ぞ 母よ咎むな

ひと塊の土に涎し 泣く母の肖顔つくりぬ かなしくもあるか

燈影なき室に我あり 父と母 壁のなかより杖つきて出づ

たはむれに母を背負ひて そのあまり軽きに泣きて 三歩あゆまず

飄然と家を出でては 飄然と帰りし癖よ 友はわらへど

ふるさとの父の咳する度に斯く 咳の出づるや 病めばはかなし

わが泣くを少女等きかば 病犬の 月に吠ゆるに似たりといふらむ

何処やらむかすかに虫のなくごとき こころ細さを 今日もおぼゆる

いと暗き 穴に心を吸はれゆくごとく思ひて つかれて眠る

こころよく 我にはたらく仕事あれ それを仕遂げて死なむと思ふ

こみ合へる電車の隅に ちぢこまる ゆふべゆふべの我のいとしさ

浅草の夜のにぎはひに まぎれ入り まぎれ出で来しさびしき心

愛犬の耳斬りてみぬ あはれこれも 物に倦みたる心にかあらむ

鏡とり 能ふかぎりのさまざまの顔をしてみぬ 泣き飽きし時

なみだなみだ 不思議なるかな それをもて洗へば心戯けたくなれり

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