和歌と俳句

三室山

奈良県生駒郡斑鳩町にある神奈備山。

人麻呂歌集
我が衣にほひぬべくも味酒三室の山は黄葉しにけり

古歌集
旅にして妻恋すらしほととぎす神なび山にさ夜更けて鳴く

万葉集・巻十三・作者不詳
神なびのみもろの山に斎ふ杉思ひ過ぎめや苔生すまでに


古今集・秋よみ人しらず
神な月時雨もいまだふらなくに かねてうつろふ神なびのもり

古今集・秋よみ人しらず
ちはやぶる神なび山のもみぢばに思ひはかけじ うつろふものを

貫之
ゆくがうへに はやくゆけこま 神垣の 三室の山の やまかづらせむ

忠岑
神なびのみむろの山を秋ゆけば錦たちきる心地こそすれ

古今集・神遊びのうた とりもののうた
神垣のみむろの山のさかき葉は 神のみ前にしげりあひにけり

後撰集・冬 よみ人しらず
神無月時雨とともにかみなびの森の木の葉はふりにこそふれ

好忠
神南備の三室の山をけふ見れば下草かけて色づきにけり

好忠
三室山木の葉散りにしあしたよりあばらに見ゆるよもの玉垣

新勅撰集・冬 好忠
ちはやぶる神南備山の楢の葉を雪踏みわけてた折る山人

後拾遺集・秋 能因
あらし吹く三室の山のもみぢばは立田の川の錦なりけり

経信
三室山もみぢちるらし旅人のすげのをがさに錦織りかく

千載集・春 源国信
みむろ山谷にや春の立ちぬらん雪のした水岩たたくなり

千載集・秋 京極関白家肥後
みむろ山おろすあらしのさびしきに妻呼ぶ鹿の声たぐふなり

金葉集・冬 皇后宮權大夫師時
神まつる御室の山にふればゆふしでかけぬ榊葉ぞなき

俊頼
みむろ山しかの鳴くねにうちそへて嵐ふくなり秋の夕暮れ

俊頼
衣手の 冴えゆくままに かみなびの 三室の山に 雪は降りつつ

清輔
まつはいな 神のみむろの 子の日には 榊を千代の ためしにはせむ

清輔
神垣のみむろの山は春きてぞ花のしらゆふかけて見えける

新古今集・夏 よみ人しらず
おのがつま恋ひつつ鳴くや五月やみ神なび山の山ほととぎす

新古今集・秋 八條院高倉
神なびのみむろのこずゑいかならむなべての山も時雨するころ

寂蓮
あたりまで 三室の山は のどかにて 松風にほふ やどの梅が枝

定家
朝まだき霧はこめねどみむろ山秋のほのかに立ちにけるかな

定家
神なびのみむろの山のいかならむしぐれもてゆく秋のくれかな

定家
三室山けふより秋のたつた姫いづれの木々の下葉そむらむ

定家
うつろはぬ色をかぎりにみむろ山時雨も知らぬよを頼むかな

良経
霜やたび置きにけらしな神垣や三室の山に採れる榊葉

定家
うごきなき君がみむろの山水にいく千代法のすゑをむすばむ

俊成
ゆくかたを思ひぞおくるほととぎす三室の山のあけぼののそら

定家
秋の嵐ひと葉も惜しめ三室山ゆるすしぐれの染めつくすまで

良経
三室山みねの檜原のつれなきをしをる嵐に霰ふるなり

定家
神さびていはふみむろの年ふりてなほゆふかくるまつの白雪

雅経
千代をいのる かみの三室の さかき葉は きみがためしに しげりあひにけり

雅経
みむろやま 秋をや風の かへすらむ 紅葉にあける かみなびのもり

定家
みむろ山しぐれもやらぬ雲の色のおくれうつろふ秋の夕ぐれ

実朝
五月闇かみなびやまのほととぎす妻恋ひすらし鳴く音かなしも

実朝
みむろ山もみぢちるらしかみなづき立田の川に錦をりかく

定家
神垣やけふの空さへゆふかけてみむろの山のさかき葉のこゑ

新勅撰集・秋 左近中将伊平
みむろやま したくさかけて おくつゆに このまの月の かげぞうつろふ

新勅撰集・秋 權中納言隆親
しぐれけん ほどこそみゆれ かみなびの みむろのやまの 峯のもみぢば

新勅撰集・冬 前関白道家
くれやすき ひかずもゆきも ひさにふる みむろのやまの まつのしたをれ

定家
久にふるみむろの山のさかき葉ぞ月日はゆけど色もかはらぬ