伊勢物語・二十三段
君があたり見つつを居らむ生駒山雲なかくしそ雨は降るとも
後拾遺集・夏 能因
わが宿のこずゑの夏になるときは生駒の山ぞ見えずなりゆく
後拾遺集・羇旅 良暹法師
わたのべや大江のきしにやどりして雲井にみゆる生駒山かな
経信
さすらふる身はなにぞよと秋深み生駒のやまの月しみつれば
国信
あらしふく 生駒の山の 雲はれて なかゐの浦に すめる月影
兼昌
生駒山 たむけはこれや 木のもとに いはくらうちて 榊たてたり
親隆
生駒山 ふもとの野辺も 霜枯れて すみかも見えぬ くつわむしかな
実朝
雲ふかきみ山のあらしさえさえて生駒の嶽に霰ふるらし
雅経
ながめやる 生駒の山の みねの雲 いくへになりぬ さみだれの空
雅経
へだてつる かすみややがて くもるらむ 生駒の山の 春雨の空
定家
いこま山あらしも秋の色にふく手染のいとのよるぞかなしき
定家
いこま山いさむる嶺にゐるくもの浮きて思はきゆる日もなし
定家
秋の色と身を知る雨のゆふ雲に伊駒のやまもおもがはりして
定家
津の国のこやさく花と今もみるいこまの山のゆきのむらざえ
新勅撰集・冬 源師賢朝臣
そでぬらす しぐれなりけり 神無月 いこまのやまに かかるむら雲
新勅撰集・雑歌 良経
ひさかたの くもゐに見えし いこまやま はるはかすみの ふもとなりけり
続後撰集・恋 藤原行家朝臣
生駒山 峰に朝ゐる 白雲の へだつる中は 遠ざかりつつ
其角
生棉取る雨雲たちぬ生駒山
几董
角豆とる籬のそなたやいこま山
晶子
誰ぞ夕ひがし生駒の山の上のまよひの雲にこの子うらなへ
芭蕉
菊の香にくらがり登る節句かな
一茶
行春の空はくらがり峠かな