和歌と俳句

川端茅舎

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月の道捨てし芒の穂先より

うち仰ぐさかしまに雲に乗り

天心の小さきの錐を揉む

大露や芭蕉ほとぼる薄煙り

老杉の髪のごとくに良夜かな

の野に鉄塔エレキ通はする

鉄塔に電線に多摩遙か

草紅葉瑠璃光の水ひろごりぬ

芭蕉葉や秋白日を照返し

芝ありてこれにさく生駒山

お天守に鳶の鳴く日の墓詣

詣づればお天守見ゆる父の墓

ちちははの墓に詣でて和歌めぐり

秋晴れて鴎も眉毛あるごとし

秋晴るゝ絶壁波の相をなす

秋晴や波はなかりし片男波

するすると月の幹あり谷覗く

通天の月の欄より谷覗く

なくやきらりきらりと紙屋川

此石に秋の光陰矢の如し

竜安寺塀の矢印茸山

菊の香や芭蕉の繿褸金色に

葉生姜やかりりかりりと露の玉

啄木鳥や日の円光の梢より

啄木鳥や日輪かくす幹不思議