川端茅舎
今朝秋の露なき芭蕉憂しと見し
露の葛風一面に丘を超え
あな白し露葛の葉のうらがへり
白芙蓉暁けの明星らんらんと
八重葎白露綿のごときかな
月の面のきずかくれなし露の空
まつ蒼に朴立てりけり露の空
一と筋に露の空ゆく鐘の声
曼珠沙華今朝出頭す二寸かな
三日はや一尺五寸曼珠沙華
また微熱つくつく法師もう黙れ
秋風やささらの棕櫚の蠅叩
野分して芭蕉は窓を平手打ち
眼を射しは遠くの露の玉一つ
秋風や稚子大声に待つ門に
師ゐますごとき秋風砂丘ゆく
秋風に我が肺は篳篥の如く
秋風に砂丘に杖を突刺し立つ
こほろぎに拭きに拭込む板間かな
月出でて四方の暗さや鉦叩
ふくやかな乳に稲扱く力かな