霧の港北緯五十度なり着きぬ
波荒く港といへど蕗繁り
樺を焚きわれ等迎ふる夏炉なり
積雲も練習船も夏白き
南風つよし綱ひけよ張れ三角帆
百千の帆綱が南風にみだれなき
練習船白南風の帆を並めて航く
月見草雲の夕焼が地を照らす
月見草闇馴れたれば船見ゆる
白波の沖よりたてり波乗りに
波乗りに暮れゆく波の藍が濃き
龍舌蘭灼けたる地に葉を這す
龍舌蘭夏天の銀河夜々濃ゆし
牡丹照り二上山ここに裾をひく
牡丹照り女峰男峰とかさなれる
病院の匂ひ抱ける薔薇のにほひ
激戦のあと夏草のすでに生ひぬ
船長も舵手も夏服よごれなき
鵜のあはれ鵜縄の張ればひかれたる
蝙蝠を闇に見たりきみとる夜半
百合匂ひ看護婦は死の髪を梳く
母に遺す一高の帽白き百合
夜光虫夜の舷に吾は倚
捕虫網子等は穂わたをかゆがれる
海あれて緑陰の椅子部屋にある