和歌と俳句

橋本多佳子

曇り来し昆布干場の野菊かな

わが行けば露とびかかる葛の花

硬き角あはせて男鹿たたかへる

わがまつげ霧にまばたき海燕

海彦のゐて答へゐる霧笛かな

アベマリア秋夜をねまる子がいへり

山荘やわが来て葛に夜々燈す

花葛の濃きむらさきも簾をへだつ

ひぐらしや絨毯青く山に住む

月照りて野山があをき魂送り

月の砂照りてはてなき魂送り

おぼえなき父のみ魂もわが送る

送り火が並び浦曲を夜にゑがく

野路ゆきて華鬘つくらな曼珠沙華

曼珠沙華みとりの妻として生きる

曼珠沙華身ぢかきものを焼くけぶり

曼珠沙華はふりのけぶり地よりたつ

月光にいのち死にゆくひとと寝る

月光は美し吾は死に侍りぬ

夫うづむ真白き菊をちぎりたり

菊白く死の髪豊かなりかなし

曼珠沙華咲くとつぶやきひとり堪ゆ

曼珠沙華あしたは白き露が凝る

露のあさ帯も真黒く喪の衣なり

曼珠沙華けふ衰へぬ花をこぞり

遠花火夜の髪梳きて長崎に