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稲妻のするスマトラを左舷に見 虚子
稲妻はかかはりもなし字を習ふ 貞
稲妻や雲の薬袋夕焼けぬ 茅舎
稲妻に夜坐美しや草の宿 たかし
稲妻をふみて跣足の女かな 虚子
いなづまのやうやくよわく淋しさよ 万太郎
稲妻の天ひろく澗を水はしる 楸邨
三等車野の稲妻を浴びてはしる 楸邨
稲妻やつとめの鞄見し忿り 不死男
いなびかり想ひはまたもくりかへす 多佳子
いなづまに落葉松の幹たちならぶ 多佳子
稲妻のするたびに浮く雲の筋 彷徨子
教へ児等いねたり稲妻瞼越し 草田男
稲妻のはなやぐ露天子を寝かす 誓子
いなびかり嬰児は肩に眠りよる 誓子
蟋蟀の無明に海のいなびかり 誓子
雲間より稲妻の尾の現れぬ 虚子
稲妻の一瞬われも河も照る 波津女
稲妻のつづけさまなりわれ黙す 波津女
稲妻を背にして文を書きつづく 波津女
いなづまや指のさきもて字を習ふ 誓子
祭提灯消えゐて北にいなびかり 誓子
たらたらと縁に滴るいなびかり 誓子
いなびかり集ひにつどふ海の上 誓子
一すぢのいなづま走る庭の裡 誓子
一角を開きては出づいなびかり 誓子
晩餐を照らすいなづま峙ちて 誓子
こほろぎの忘れしころのいなびかり 誓子
一角の稲妻天を覆はざる 誓子
海暗く遠稲妻のゐる吾家 誓子