和歌と俳句

新涼

新涼の驚き貌に来りけり 虚子

新涼のに蘇りたる草廬かな 虚子

新涼や豆腐驚く唐辛子 普羅

新涼や二つ小さき南瓜の実 鬼城

新涼の旭あまねしや林檎園 喜舟

新涼や一ト日鎖す戸に虫鳴いて 亞浪

新涼や女に習ふマンドリン 草城

新涼や種茄子日々の捨て太り 草城

新涼や生姜すり込む濃甘酒 草城

新涼や寝くたれ髪に日の光 草城

新涼の釣瓶漏りつつ上り来る 草城

新涼や火の穂透き見る岐阜提灯 石鼎

新涼や戸締めて蚊帳へ又這入る 石鼎

新涼や紫苑をしのぐ草の丈 久女

新涼や日当りながら竹の雨 久女

新涼やほの明るみし柿の数 久女

新涼や削りし土と苔を箕に 石鼎

新涼の月こそかかれ槇柱 虚子

新涼や子とつれあそぶ大山蟻 石鼎

新涼や日に影うつる鳳仙花 石鼎

新涼の灯が早かりし夕餉かな 橙黄子

新涼や夜の烏羽玉の松容ち 橙黄子

新涼や濡れ纜の砂まみれ 泊雲

新涼や夜のはなれゆく浜篝 亞浪

新涼の身にそふ灯かげありにけり 万太郎

新涼の髪結ひやうや姉いもと 万太郎

新涼や白きてのひらあしのうら 茅舎

新涼の雨や芭蕉をひるがへし 普羅