和歌と俳句

高浜虚子

前のページ< >次のページ

むづかしき禅門でれば葛の花

秋風にふえてはへるや法師蝉

仰木越漸く多きかな

銅鑼の音のに響くや鞍馬山

清浄な月を見にけり峯の寺

杉の下に人話し居る月夜かな

此行やいざよふ月を見て終る

学寮を出て来る僧に夜霧かな

唐門の赤き壁見ゆ竹の春

秋雨にぬれては乾く障子かな

去来抄を喰ひつつ讀む夜かな

荷を投げて休む山路の野菊かな

黒谷がまづ打つ初夜や後の月

道標や夜寒の顔を集め讀む

苔青く紅葉遅しや二尊院

祇王寺に女客ある紅葉かな

柿紅葉山ふところを染めなせり

鹿の声遠まさりして哀れなり