和歌と俳句

長谷川かな女

雪国のありとも見えず松飾

羽子板の重きが嬉し突かで立つ

俎板の染むまで打はやす

近江の鮒に庖丁はじめしたりけり

賽ひろふや片手にあづる額髪

懇ろに母とはなりぬお元日

小人形それぞれ名あり松の内

後園の梅少し咲き初大師

うろ覚えの皆恋の唄手毬つく

そうび咲く壺に元日しづかなり

初春を母の喪かむる夫婦かな

つれづれの人美しき睦月かな

初詣小さき宮の神仏

大歯朶をのせたり古き獅子頭

鶯の庭の音なりお元日

初笑ふことの何かと発行所

長命の媼に積藁の初日かな

傍らの子にも初日のさして来ぬ

嗽ぐ水まろくあり初明り

歯朶はさむ戸に安らかに住ひけり

皇居めぐる子の日の松のたぐひなし

花の蕋ほどにめでたし初若菜

初若菜うらうら海にさそはれて

鞠の如く見えし子愉し初明り

初富士に珈琲さゝぐボーイあり

紅顔の義経つよし飾り凧

初能の鶴の大袍皆舞へり