どんよりと利尻の富士や鰊群来
氷海や船客すでに橇の客
本船へ氷上暮れて往来なく
学問のさびしさに堪へ炭をつぐ
夜を帰る枯野や北斗鉾立ちに
峡深や旗じるしせし鮎の宿
鱚釣りや青垣なせる陸の山
海の門や二尾に落つる天の川
海坂や見えてはるけき鯊の舟
大嶺や裾曲の道を炭車
道庁や雪墜る音の昼餐どき
古びたる午下の日輪川施餓鬼
いとどしき猟夫の狐臭炉のほとり
激つ瀬やのど瀬にかよふ落椿
流氷や宗谷の門波荒れやまず
おほわたへ座うつりしたり枯野星
犬橇かへる雪解の道の夕凝りに
凍港や旧露の街はありとのみ
船客に四顧の氷原街見えず
氷海やはるか一聯迎ひ橇
氷海やはやれる橇にたわむところ
氷海や月のあかりに荷役橇
飾り太刀倭めくなる熊祭
熊ゆきぬ神居のくにへ贄として
雪の上に魂なき熊や神事すむ